慶友銀座クリニック 耳鼻科領域の正しい診察
~医療事故を未然に防ぐ診療を~
✖ 鼻や耳の症状は内科と耳鼻科のどちらも??が担当して診察
〇 常識的に耳鼻科が担当します
✖ 耳鼻科診療に必要な機械はないが、内科医が耳鼻科領域を診察
〇 機械がないと耳鼻科領域は正確な診断と治療できず、医療事故の原因にも。
視力検査のない眼科のようなもの。
✖ 連携の専門医療機関に紹介します
〇 耳の病気(外耳炎や中耳炎)は手遅れの場合も!
✖ 外耳炎や中耳炎に対して、煩雑に血液検査!する
〇 必要なし
【内科(耳鼻科領域)】
鼻血(鼻出血) | 耳垢(耳あか) | 耳鳴り | 突発性難聴 |
急性低音障害難聴 | めまい | (新)コロナ感染 | メニエール病 |
異物(耳・のど) | 外耳道真菌 | 嗅覚障害 | 外リンパ瘻 |
寒暖差アレルギー | 花粉症(薬) | 口腔の性病 | 後鼻漏EAT |
耳垢(じこう・みみあか) | 副鼻腔気管支 | 風邪・インフル | 加齢性難聴 |
口腔顔面痛 | 鼻呼吸 | 味覚性鼻炎 | 秋の花粉症 |
【外科(耳鼻科領域)】
外耳炎 | 中耳炎 | 耳介血腫 | 強い鼻炎 |
扁桃炎 | 扁桃周囲膿瘍 | 強いノドの痛み | いびき無呼吸 |
睡眠時無呼吸 | 鼻中隔弯曲症 | イヤフォン洗浄 | 花粉症(手術) |
顔面神経麻痺 | 中耳炎 | 航空性疾患 |
耳鼻咽喉科疾患は、手術を必要時に行わなければならない外科(耳鼻科領域)と、手術を行わない内科(耳鼻科領域)にわけられます。耳鼻科は、感覚器(聴覚・嗅覚・味覚)を扱うので、次の日ではなく、その場で検査し外科的な処置をしないと急激な感覚の消失(特に聴覚:再生機能がない)を起こすことがあります。その場での迅速な対応をするために機材(聴力検査装置・聴力検査室・耳用手術用マイクロスコープ)を耳鼻科は揃えています。世の中で視力検査ができない眼科はないように、耳鼻科も必要な機材は揃えています。耳鼻科の検査機械がなく耳鼻科を行っていれば、視力検査ができない眼科と同じようなものです。さすがにみたことはありません。
においの分子が鼻腔の中に入ると、そこの天井部分にある臭粘膜にある粘液に溶け込みます。するとそこにある嗅細胞が興奮して電気的な信号が発生し、信号が大脳に行き、においの感覚が生じます。
静脈性(血行性)嗅覚検査は、アリナミンをゆっくり静脈注射して、アリナミンが匂い始めた時間及び匂いが感じられなくなった時間を測定し、嗅覚障害の程度を調べます。他に基準嗅覚検査(T&T検査)があります。当院では静脈性嗅覚検査を行っています。
Ⅰ 質的嗅覚障害:数少ない 臭いを感じる様態に変化 異臭症が代表
刺激性異臭症 本来の臭いと異なる臭いを感じる 何の臭いを嗅いでも同じ臭い
自発性異臭症 周囲に臭い物質がないのに、本人のみが臭う
Ⅱ 量的嗅覚障害 大部分 嗅覚低下と嗅覚脱出(全く臭いを感じない)
種類 | 原因 | 治療 |
気道性 | 外鼻孔から吸入された臭い物質が、嗅覚受容体まで到達できないので、臭いを感じない 鼻中隔弯曲症・アレルギー性鼻炎(花粉症)、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻ポリープや腫瘍、喫煙(鼻の粘膜があれる) |
生活指導)原因アレルギーを避ける。禁煙 薬処方)アレルギー薬(点鼻薬)・抗生剤・内服ステロイド・免疫薬 手術)日帰り(レーザーや高周波ラジオ波)・入院(薬が効果なければ、内視鏡による鼻手術) |
嗅神経性 | 臭いの細胞の障害:嗅細胞や嗅神経が感冒のウイルス(新型コロナも!)により障害される・嗅神経の切断や障害でもおこる。嗅細胞の再生に障害。薬物摂取等により体内の亜鉛やビタミンが減少することが大きな原因 |
理学療法)嗅覚刺激療法 薬処方)亜鉛・漢方薬(当帰芍薬散・人参養栄湯・加味帰脾湯) サプリ)ビタミンA |
中枢性 | 嗅球から中枢の障害:においの検知や識別能力が低下 頭部外傷による脳挫傷が多い・脳卒中・脳腫瘍・神経変性疾患(アルツハイマー型認知症やパーキンソン病等の主症状の出現前に嗅覚障害が出現) |
原因の解明と早期発見と原因の治療 |
型コロナ | 気道性+嗅神経性+中枢性:3つの成分混じることがある | 各成分に対して上記治療 嗅覚刺激療法(6ヶ月)、ステロイド内服/点鼻、亜鉛、サプリ(ビタミンA・オメガ3脂肪酸・ αリポ酸) |
参考 上羽=COVID19による嗅覚障害 日耳鼻125-pp1440-5,2022
嗅覚障害診療ガイドライン(日本鼻科学会 日鼻誌56-4,2017p487-556)では感冒後の嗅覚障害の患者さんに嗅覚刺激療法が効果的と報告しています。新型コロナも感冒の一種なので、効果が期待されます。ガイドラインでは、感冒後に嗅覚障害を起こした患者さんに対し、4種類の香り(バラ・ユーカリ・レモン・グローブ)を嗅がせると嗅覚障害が改善したとの報告があります。新型コロナ罹患による、嗅覚障害にも効果があると報告されています。
参考(Hummel T et al. Effects of olfactory training in patients with olfactory loss Laryngoscope(119)pp 496‒9,2009275)(Fleiner F et al Active olfactory training for the treatment of smelling disorders.Ear Nose Throat J (91)pp198‒203,2012)(Geißler K et al Olfactory training for patients with olfactory loss after upper respiratory tract infections Eur Arch Otorhinolaryngol(271) pp1557‒62,2014) 上羽=COVID19による嗅覚障害 日耳鼻125-pp1440-5,2022
耳かきなどで傷ついた外耳道にアスペルギルスやカンジダ等の真菌が寄生することで発症します。外耳道内に胞子状の真菌(カビ)や繁殖している様子や、ヨーグルト状に変性した貯留物がみられます。強いかゆみを示し、繁殖したカビの塊や貯留物が奥で広がり鼓膜を覆うと、耳閉感や難聴感を引き起こします。
治療は、真菌塊の除去、生食等による外耳道による洗浄、抗真菌剤の塗布、抗真菌薬の服用(副作用が強いので最後の手段として感染症専門医と相談しての処方)。重症の場合は完治するまでに数か月かかることもあります。
鼻をかんだ時に鼻出血はおきやすいのですが、何の前触れもなく突然出ることもあります。子供の場合は、鼻ほじりをしたり、鼻こすりをしたりして、鼻の中を傷つけてしまい、鼻血を出して来院することが多いです。大人では最近は鼻毛をとったりして出血を起こしてしまう患者さんもいます。他には花粉症を含めたアレルギー性鼻炎や鼻副鼻腔炎による炎症性のもの、鼻中隔の弯曲や斜鼻などの構造的なもの、鼻の中の異物によるもの、全身性の血管炎であるウェゲナー肉芽腫症 (Wegener's granulomatosis)による鼻中隔の穿孔や、殴られたとかの外傷性があります。海外では、麻薬の吸引による鼻中隔の穿孔による鼻出血なども報告されています。鼻や副鼻腔、上咽頭の良性や悪性の腫瘍ということもあります。全身性疾患が鼻出血の原因になることがあります。まず多いのは高血圧です。血管がぱんぱんに張っているので、出血はしやすくなります。他には血管が硬くなる動脈硬化や、血管が弱くなり修復しにくくなる糖尿病などの生活習慣病、肝臓や腎臓の病気があります。脳梗塞や心筋梗塞の治療の薬であるワーファリンやバファリンなどは血が止まりにくくなってしまい、鼻出血の原因になり、老人の方は多いので、見逃すことはないように治療していきます。脳梗塞により流れる血液をさらさらにするためにアスピリンやワーファリンなどの血液の抗凝固作用を有する薬剤を服用している方、他には血液自体の病気である血小板の減少や、白血病や血友病、他には遺伝的な血管の病気が原因となることがあります。よく脳出血の症状のひとつでしょうかという質問を患者さんから受けることがありますが、脳からの出血が鼻に出てくることはなく、経験上も一例もありません(脳梗塞等の治療を行っているための抗凝固作用の薬を服用している方は、鼻出血だけでなく脳出血も止まりにくくなります)。耳鼻咽喉科の専門医は、既往歴を含め、出血部位や、出血状態をみて、単純な出血か否かを判断しながら診断していきます。他に私自身の経験として、鼻出血とのことで他の大病院から紹介されたものの、実は食道の静脈瘤からの出血ということがありました。
鼻腔の内部を左右に仕切る壁である鼻中隔の粘膜から、鼻出血が出ることがほとんどです。特に小鼻の内側にある鼻中隔のキーゼルバッハ部位Kiesselbach's areaというところから出血しています。キーゼルバッハ部位の粘膜には、血管網、血管吻合が著しい場所で、血管が網の目のように走っていて、ちょうど傷がつくと出血が起こりやすく、くり返し出血しやすい場所です。この部位は外界に近いことから、鼻ほじりをはじめ、いろいろな刺激を受けやすいために鼻出血の好発部位です。中高年になると、鼻の奥にある下甲介の後端部の血管から大量の出血が起きることがあります。
☆ファーストステップは、出血している場所をおさえて止める圧迫止血法
1)姿勢は前かがみ(のどに血がまわってしまわないようにするため)
2)口にまわってきた血は飲まないで吐き出す(ゴミ箱か洗面器を抱えながら、その中に吐いて下さい。血を飲むと気持ちが悪くなり、吐き気や嘔気がでます。気管支に入ると、咳が止まらなくなり、肺炎の原因にもなります)
3)両側の小鼻(鼻を膨らませるときに動かすことの出来る軟らかい部分)を親指と人差し指で強くつまみます(15分間)。出血部位が左右わかる場合にはその側だけを指で圧迫します。
鼻出血で出血多量により死んでしまことはありませんかと、よく患者さんから訪ねられます。キーゼルバッハ付近からの単純な出血であれば、自分が思っているほど出血はしていないことが多く、経験上は死に至ったことはありません。しかし、15分つまんでも、血が止まらない。口にどんどん回ってくる。出血している側と反対側からもどんどん血が出てくる場合は、要注意です。中高年以降に多い、下甲介後端付近からの出血の場合があります。動脈性の場合もあり、出血点を確認しにくい、鼻の奥にあり止血しにくいなどの理由で出血量が多くなりがちです。夜間の場合は、上記の止血をして30分以上も止血できなければ、できれば常時耳鼻咽喉科医がいる大病院を受診して下さい。耳鼻咽喉科医でなければ対応できないことがあります。
寝た子を起こすことはないようにします。止まっている場合はソフトに、出血しているときは積極的に行います。
既往歴や薬剤服用歴を含め詳細な問診をします。出血がどんどん出ている場合は、ご家族からお話を聞くことも多いです。病院に来るときはお薬手帳をもってきていただくと、医師はお薬でまず患者さんの状態を把握できるのでありがたいです。
鼻腔内を観察し出血部位の確認します。単純なキーゼルバッハ部位からの出血で現在止血しているのであれば、溶けるとゼリー状になるスポンジ等を鼻に挿入して、鼻出血を起こした鼻の傷をおおいます。 場合によっては薬品による局所処置も行うことがあります。よく鼻を焼いて下さいという患者さんがいます。出血をしている場合は、レーザーや電気凝固でピューピュー出血している血管を焼くことはありますが、止まっている場合は、血管を焼くと、キーゼルバッハ部位は特に血管が豊富なところなので、寝た子を起こしたように出血をしてしまうことも経験上あります。焼く場合は、寝た子を起こさないように、粘膜の状態、血管の状態を見て、慎重に行う必要があります。下甲介後端からの出血の場合は、上咽頭までのガーゼやスポンジの挿入で、止血することが多いです。
出血量が多く、止血しない場合や、大出血を繰り返す場合、全身状態が良くない場合には入院治療となります。安静にしても出血をし、鼻腔全体のガーゼパッキング(ベロックタンポン)でも効果が無い場合は、全身麻酔下に出血する動脈を縛って止める(顎動脈結紮術等)を検討します。
外見上は鼻は曲がっていなくても鼻の中は、どんな大人も程度の差こそあれ、曲がっています。木がまっすぐに生えていないように、少しは曲がっています。鼻の左右の仕切りを鼻中隔といいます。軟骨と骨で構成されている平面的な壁です。鼻中隔の弯曲はスポーツや転倒で鼻をぶつけて曲がってしまったという外傷性のものもありますが、多くは顔とともに軟骨や骨が成長していく課程で、微妙なずれが生じ、平面的な壁が曲がっていくことが原因です。思春期から目立ち始め、成人の約90%で鼻中隔の弯曲があるともいわれています。弯曲していないのは、曲がっていないように弯曲しているともいえます。大抵の人は日常生活をするうえで、その曲がりは問題ありません。しかし、鼻中隔の曲がりがひどいと、鼻の通りが悪くなり、粘膜に刺激を受けて炎症が起きやすく、鼻血が出やすくなったり、蓄膿症や中耳炎、嗅覚障害などの症状を起こすこともあります。最近ではいびきや睡眠時無呼吸の治療対象としても注目され、鼻中隔の弯曲が強い人が上の歯にインプラントを深く入れすぎると歯性上顎洞炎を起こし、インプラントを最悪抜かねばならないこともあります。鼻中隔の弯曲の手術後にインプラント手術をすることも提案されています。
鼻の弯曲を治そうとすれば、鼻の入り口から数ミリのところを切開し、弯曲した部分の軟骨を取り除いたり、突出した骨を削り取ったりする手術が必要です。以前は局所麻酔で行われていましたが、今は全身麻酔で行うのが主流です。ただし、これらは普通の鼻中隔弯曲症のケースです。中には、鼻の中の弯曲が鼻の形そのものを変えている重症例もあります。このような外鼻変形を伴う鼻中隔弯曲症では、通常のやり方では弯曲が残ってしまうことがあります。また外鼻の形をよくする形成外科的な手術も、鼻の通りをよくするという機能面はあまり重視されていませんでした。そのため、外鼻と鼻中隔を一体の治療対象として治療するやり方が注目されています。それは左右の鼻の穴の間をわずかに切開することで、鼻をまっすぐにしたり、低い鼻を高くしたり、鼻筋を通したり、わし鼻を整えるなど、鼻が通るという機能面だけでなく審美面の配慮ができる手術(鼻中隔外鼻形成術)です。従来の鼻中隔弯曲症の手術では、鼻の形はまず変わりませんでしたが、鼻中隔外鼻形成術は土台をしっかりさせた上で、上に盛っていくような方法なので、高くどっしりとしたような鼻になります。手術時間は、従来と比べて何倍も時間がかかります。最近では外切開でなく、鼻の中の内切開で傷口を見せることなく行う手術法も発達してきました。このような鼻中隔外鼻形成術は海外(特に欧米)では一般的でしたが、鼻が細くて低いアジア人には適していませんでした。ただし、日本人よりも鼻が細いといわれている韓国では勉強会が盛んに行われていて、日本でも名だたる大学に属する医師もこれらに参加し研鑽するようになってきました。手術も一部の大学病院を先頭にひろまりつつあります。
外耳道炎⇒日本テレビ「ZIP]でも解説しました。
「外耳道の構造」
外耳道は、耳の入口から鼓膜までの3cm程度のやや曲がった管状の通路です。外耳道の入り口は、柔らかく耳毛が生えています。外耳道は、重層扁平上皮という皮膚で覆われています。入口に近い通路の半分は、重層扁平上皮の下が軟骨組織でできている外耳道軟骨部(ここが耳かきするところです。あまり痛くはありません)。奥の鼓膜までの半分は外耳道骨部(ここで耳かきすると痛いです)といい重層扁平上皮の下が骨でできています。外耳道入口付近の外耳道軟骨部の重層扁平上皮には耳毛や脂腺(耳毛の根っこに連なる)や耳垢腺があります。外耳道入口部の耳毛に向かって、鼓膜から上皮が、鼓膜の外側に移動して、さらに外耳道の外側に移動していきます。そして耳毛の生えている部位で上皮が剥がれて、汗(耳垢腺からの分泌物)等の水分と混ざり、耳垢となります。耳垢腺は汗腺の一種であるアポクリン腺と組織的には同じものであり、アポクリン腺が多いとじくじくした耳垢になります。
「外耳道炎とは」
外耳道炎(外耳炎)は、耳の掃除のときに傷ついてしまった外耳道の皮膚の表面に、細菌や真菌が繁殖して炎症が発症してしまう病気です。潜水士やサーファーのように慢性的に冷水が耳に入り、刺激を受け続けていると外耳炎をおこして外耳炎を起こしやすくなります。またプールの水に入っている消毒液が刺激となり外耳炎が起こることもあります。
外耳道炎(外耳炎)の種類としては主に2種類があります。入口付近に出来るおできのようなものは、急性化膿性限局性外耳道炎といいます。内側に起こる皮膚全体が赤く腫れる場合は、びまん性外耳道炎といいます、外耳道炎は、外耳道に溜まっている耳垢や浸出液を、マイクロスコープを使ってきれいに専用用具を使い取り除き、きれいに鼓膜まで見えるようになった状態にして、やっとこさ診断できるという、耳鼻咽喉科医でも結構面倒な病気です。そこに辿り着くまで、毎日耳の中を洗ったりほんと大変なことがあります。最近は、耳鼻科以外の先生が、にきびを治療するような感覚で、耳の中をよく観察せず、抗生物質入りの強い点耳液をただ処方して、耳の中がカビだらけになり、鼓膜まで破れて耳が聞こえなくなったというケースがありました。素早い対応をしたので難を逃れましたが、もし難聴が残ると裁判になり高額の請求がきてもしょうがないケースでした。こういうときは、外耳炎は耳鼻科の専門医に診察させてくださいと切に思うことがあります。
はじめの頃は軽い痒みが外耳道にありますが、ついつい掻いてしまうことで、痒みから軽い痛みになり、次第に激痛になります。酷くなると耳だれ(外耳道膿瘍 耳漏)や、外耳道が腫れてしまい外耳道が狭くなり耳閉感から伝音性の難聴や酷くなると混合性難聴やそれに伴う耳鳴まで至るケースもあります。外耳道炎の中には、外耳道真菌症まで至るケースもあります。傷ついた外耳道の表面にかび(真菌)が繁殖し、我慢できない程の痒みと痛みが生じます。カビの胞子が外耳道の中に増えて、汚い綿球がつまっているようにみえますが、実はカビの塊であることが多いです。このように外耳道炎は重篤な状況まで起こしてしまう病気です。
「外耳道炎は再発しやすい」
耳かきが癖になっている人は、再発しやすい傾向にあります。耳かきでかるく外耳道を傷つけてしまい、それが痒み対策になり、それが外耳道炎の炎症になります。綿棒でこするというのも、こするのは擦過といい、かるい傷をつけているのです。お風呂やプールの後は、耳垢が水分を含み膨張して耳垢がとれにくくなり、それで耳を掻くと外耳道炎になりやすくなります。また最近ではコロナ禍によるテレワークの急増で、イヤフォンの長時間使用による外耳炎が増えています。
「外耳道炎の治療」
まず耳の中をさわらないようにすること。綿棒で外耳道を傷つける人がとても多いです。耳を洗うことがとても効果的です。対症療法として、痛み止めや、原因菌により抗生物質入りの点耳薬や、抗真菌剤を塗ります。外耳道炎に必要な診察(これができるのであれば、耳鼻科以外の先生でも安心です。ひとつでも欠けたら、数千万の訴訟の対象になることがあります)
① 耳垢や耳漏を鼓膜がきれいにみれるまで専用鉗子で除去した上で、診察しているか。耳垢が多いので、よくわかりませんが、とりあえずお薬を処方しておきましょう、症状が悪化すれば紹介しましょうは問題外です。手遅れになることが多いです。内科的耳鼻科と称して、耳の中をみる顕微鏡も吸引管もなく、適当に抗生物質入りの強い点耳薬を処方してしまう内科医師がいます。患者様の状態が悪化してしまい、飛び込みで当院に来院する患者様が増えています。注意して下さい。
② 外耳道の炎症によるものか、カビによるものかみただけである程度判断できるか(最終的には培養)
③ 炎症による難聴に対応できるか(聴力検査装置がないのは問題外です。訴訟回避の為に、わざと聴力検査装置を置いていないところもあります。必ず聴力検査ができるところで診察してもらいましょう。)難聴を起こすと一生回復しないことがあります。
④ 原因菌の精査(培養)。ただし全身検索の為の血液検査(肝機能や腎機能)などは全く必要ない。
A:イヤフォンの種類と洗浄(あくまでも目安。メーカーのメンテナンス指示に必ず従う)
① カナル型:主流。耳栓のような形のイヤーピース(イヤーチップ)を耳の奥まで入れ込み、遮音性は高い。耳のかなり奥まで達するタイプが流行りだが、奥に行けばいくほど外耳道炎はおこりやすい。耳の奥の外耳道骨部(外耳道の奥の半分以上・鼓膜に近い)にいけば痛い。痛かったら即外して下さい。イヤーピースは取り外しが可能。イヤーピースはシリコン製(耐久性高い、耐水性が高く水洗い可能場合有り、シリコン外れやすい)と、密閉性が高いスポンジ様素材(ウレタン・低反発素材製等:耐久性が低い、水洗い不可のタイプが多く定期的な交換必要、細菌・真菌が繁殖しやすい)がある。
② インナーイヤー型(開放型):外耳道に接する部分は取り外しができない。耳に接する部分を除菌シートやウェットティッシュで定期的に軽く拭く。スポンジカバーがあれば定期的に交換。
③ 骨伝導:外耳道に接しないので、メーカー指示のメンテナンスで十分。接触部に痛みがおきる可能性もあり
④ 耳掛け型:外耳道に接する部分は、イヤーパッド(メーカーの指示に従いメンテナンスして下さい)が入り口部に接する。イヤーパッドは薄くて、洗ってもすぐ劣化する可能性有り。耳に掛ける部分のイヤーハンガーが擦れて、炎症を起こすことがあり、ハンガー部は除菌シート等で軽く拭く。
⑤ 首掛け型:メーカーの指示に従いメンテナンスしてください。
⑥ ヘッドフォン:耳に接するイヤーパッド部分は、ウェットティッシュ等で定期的に軽く拭く。外耳道炎にはまずならないが、耳を塞ぐので蒸れやすい。外耳道の入り口部や耳介部の湿疹を起こすことがある。
B:イヤフォンの種類別 外耳炎(外耳道炎)をおこしやすいもの
カナル型(スポンジ様)>カナル型(シリコン製)>インナーイヤー型>耳掛け型>ヘッドフォン≧オープンイヤー型・骨伝導型・首掛け型
C:イヤフォンで外耳道炎を起こさないために
(1)長時間使わない。定期的にはずす。1時間に10分以上が目安。
(2)人のものは使わない(他人からの感染)
(3)定期的な洗浄(メーカー指定のやり方で)
(4)左右間違えない(感染の伝播)
(5)耳掃除をしてからの装着(無理にする必要はなし。1ヶ月に1回程度。できれば耳鼻科に来院を)
(6)自分の外耳道にあったものを使う(外耳道が極端に小さかったり、形状が人と違う場合があり、できれば耳鼻科医に相談)
(7)耳に違和感があれば、耳掛け型⇒ヘッドフォン・オープンイヤー型に変更
(8)耳が痛くなれば、まず休み。続くようなら耳鼻科へ
(9)耳閉感や難聴感があれば、即耳鼻科へ
D:生活上の注意(自宅でのテレワークの観点から)
(1)外耳道炎の原因となる、耳かきや綿棒での外耳道の掃除でなる方はとても多いです。テレワークでは、人目も気にすることがなく、自宅でひたすら耳かきしながら、ながら仕事で炎症を起こす人は多いです。
(2)自宅で仕事をしているはずが、音楽が大好きで、家の中でガンガン音楽を鳴らすわけにはいかず、音が漏れるのをパートナーに見つかるのもおそれ、密閉型(特にカナル型)のイヤフォンで大音量のもとで、ながら仕事をしている人も実はかなりいるようです。音響機器は小さくなるほど金額が高くなる傾向にあります。会議だけなら、ヘッドフォンでもコストパフォーマンス的には十分です。音楽を鳴らしながらの会議では、カナル型もいいかもしれません。
口からの感染ルートによる性病です。近年梅毒が急激に増えています。他にはAIDSや淋菌、クラミジア、単純ヘルペス感染症、ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)感染症があります。口腔内で発見されることが多く、早期発見で根絶治療が期待されます。詳しくは
顔面神経麻痺は、顔面神経核~表情筋までの経路の障害により、表情筋を動かす信号が入ってこなくなり、表情筋が動かなくなることです。症状は、顔が曲がった状態や、目が閉じにくい、口角が上がらない、水や食事が口からもれるなどです。外科手術やけがの後にマヒが生じる場合は経路の物理的な損傷を考え、ゆっくりと進行していくマヒは聴神経鞘腫などの脳腫瘍や真珠腫性中耳炎などの耳の腫瘍や唾液腺腫瘍を考えます。急激なマヒは、ベル(Bell)麻痺とよばれる特発性で原因不明のものと、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によるラムゼイ・ハント(Ramsay・Hunt)症候群があります。稀に脳卒中による麻痺もあるので、その場合は救急対応となります。
Ramsay・Hunt症候群は、Bell麻痺と比べて予後が不良であり、自然治癒率は30%(Bell麻痺は70%)です。初期から治療を行っても治癒率はBell麻痺に比べて、Ramsay・Hunt症候群は治癒は劣るとの報告があり、麻痺が残存しやすいです。治療は薬物治療がメインで、数日間は当院処方の内服治療となりますが、経過が思わしくない場合は、当院在籍の医師が勤務している関連病院(慶應義塾関連病院・日本医科大学病院)での入院治療をおすすめしています。入院での点滴治療も当院処方の内服治療も、ほぼ内容は同じですが、入院治療のほうが安静できるということもあり治療成績もいいようです。即入院を希望なさる患者様には、当院が関連病院と連絡をとり、なるべく早くの入院ができるようにしています。
【治療】
ウイルス検査の結果が出るのが1週間程度かかり、感度もよくなく、Bell麻痺はRamsay・Hunt症候群に準じた治療となります。Ramsay・Hunt症候群の治療は、帯状疱疹ウイルス治療になり、抗ウイルス薬の投与になります。また追加して、ステロイドを主に内服で投与しています。他にビタミンB12等を追加投与しています。以上のような内科的治療でも改善しない場合は、当院で診察をしている耳専門のベテラン耳鼻咽喉科専門医が勤務する、慶應義塾関連病院での全身麻酔下での手術(顔面神経減荷術:手術時間約2時間)を検討します。この手術は、耳専門の医師ではないとできない手術で、担当医師と当院との緊密な連携のもとに迅速に対応します。慶友銀座クリニックでは、ベテランの耳鼻咽喉科専門医(部長以上)が毎日在籍していますので、神経麻痺などスピードが必要とされる症例にも迅速に対応できます。治療後、顔面神経麻痺が強く残る場合は、関連病院の慶應義塾大学病院形成外科 顔面神経麻痺専門班にて顔面神経を修復する手術・顔面の表情を整える再建形成術を行っています。
医療メイクアップも提案します。またボトックス治療も提案します。ボツリヌス毒素でであるボトックスを、顔面の筋肉に注射して表情筋を一時的に麻痺させて、リハビリーテーションとともに治療を行う方法です。ボトックス注射の効果は3ヶ月から4ヶ月持続します。病的共同運動や顔面拘縮は再発するので、多くの場合再注射が必要となります。
~顔面神経麻痺(急性期)リハビリテーション~
①蒸しタオルで患部を温める10分 1日3回(お風呂でも効果あり)
②手のひらで両側の頬を縦・横・円を描くように軽くゆっくり擦る 20秒 1日10回
③目を大きく開く 10秒 1日10回
④×低周波治療や強いマッサージはダメ
⑤×目を強くつぶるのはダメ
⑥飲酒は避けて、十分な睡眠と規則正しい生活を!
慶友銀座クリニック理事長は、日本顔面神経学会主催第十二回顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会(東京都大田区)を受講しました。顔面神経麻痺の治療には、マッサージを含めたリハビリテーションが重要です。全体の15%の患者さんで発症から半年から1年経過後も麻痺が持続し後遺症が残るといわれています。後遺症としては顔面のひきつれ(拘縮)や目を閉じたときに口が動いてしまう等の病的共同運動があります。
顔面神経麻痺のリハビリは筋力を強化するのではなく、後遺症を予防するものです。
あせらず・じっくり・長期に行うことが大切です。マッサージのやり過ぎや低周波治療器等の電気刺激はかえって顔面拘縮や病的共同運動を助長してしまうため行ってはいけません。
【予防】
帯状疱疹の予防には、ワクチン接種が有効です。自治体により補助が出る場合があるので、お住いの役所にお問い合わせ下さい。
1)乾燥弱毒生水痘ワクチン(生ワクチン)
接種対象者 50歳以上 皮下注射1回
2)乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(不活化ワクチン):推奨
接種対象者 50歳以上 帯状疱疹に罹患する可能性が高いと考えられる18歳以上
筋肉内注射2回
耳介の内部に出血が生じた状態のことです。相撲や柔道などの激しい接触を行う人に多く発生します。耳介血腫をそのまま放置すると、「力士耳」や「柔道耳」と呼ばれる耳介の変形をきたします。アメリカでは「ボクサー耳(boxer’s ear)」と言われます。
耳介は一般に耳たぶと呼ばれます。耳介は軟骨で形成されています。耳介を強い力でぶつけると出血して軟骨上部の皮膚と耳介軟骨の間に血液が溜まります。血液が溜まって腫れた状態を血腫と呼びます。
耳介の前後部に生じることが多く、無処置であると、軟骨組織の瘢痕形成、血液成分の器質化が生じます。慢性炎症へ進展することで、上記の「力士耳」や「柔道耳」と呼ばれる耳介の変形をきたします。
問診により発症した経緯を確認します。耳介の形態変化は特徴的ですので、診断に難渋することはほとんどありません。
耳介血腫が自然に吸収されることはまずありません。治療としては、まず腫脹部位に針を刺して溜まった内容液を吸引します。内容物を排出する際、成分が血液と関連したものであることを確認します。診断的治療とも呼ばれます。
耳介は顔面であることからも、吸引後の圧迫が効果的にならず、再発することも多いです。再度腫れてきた場合は、その場合複数回の穿刺となることも多く、皮膚切開など、確実に血腫を除去する方法を選択する場合もあります。その場合は紹介となります。
中耳炎とは?
中耳腔に感染が生じて炎症が起きている状態を中耳炎といいます。中耳腔とは鼓膜の奥の空間を指します。中耳炎にはいくつか種類がありますが、ここでは代表的な4疾患(①急性中耳炎②滲出性中耳炎③慢性中耳炎④真珠腫性中耳炎)について説明していきます。
① 急性中耳炎
病態
中耳疾患で最も頻度が高いものになります。典型的には鼻汁や咽頭痛を伴う感冒の後に発熱、耳痛などを生じます。子供が鼻水ずるずるの風邪を引いた後に耳が痛いと訴える場合などが想像しやすいかと思われます。感冒により鼻腔や咽頭に細菌感染が起きると、耳管(中耳腔と咽頭をつなぐ管、耳抜きの管)を通って中耳腔に炎症が波及し発症します。鼓膜穿孔がある場合は洗髪や水泳後に外耳道から鼓膜を超えて細菌が侵入する場合もあります。
診断・治療
耳鏡で鼓膜を観察し鼓膜発赤で診断します。中耳炎が進行し鼓膜穿孔を起こすと耳漏(耳だれ)を生じ、耳痛など症状が改善する場合が多いです。耳痛が強く鼓膜所見から中耳腔に膿汁貯留が予想される場合には意図的に鼓膜を切開し排膿させる場合もあります。鼓膜切開後は症状が改善し、数日で鼓膜も自然閉鎖します。15歳以下の小児急性中耳炎診療ガイドラインでは軽症の場合は耐性菌防止のために3日間は解熱鎮痛薬のみで経過を見て、症状の増悪がある場合は中等症として抗生剤の追加内服が推奨されます。重症の場合には解熱鎮痛薬と抗生剤を5日間内服に加え必要があれば鼓膜切開を実施します。
② 滲出性中耳炎
病態
中耳腔と咽頭をつなぐ管である耳管によって中耳腔は外界につながっています。何らかの原因で耳管機能が低下すると、中耳腔は出口がなくなり中耳圧が低下しやがて中耳粘膜が分泌する滲出液で満たされてしまいます。この状態となると難聴や耳閉感が生じ、滲出性中耳炎と呼びます。乳幼児の場合は耳管機能が未熟であり、生理的なアデノイドの肥大も伴うため生じます。乳幼児では自覚症状を訴えられないために発見が遅れ、中等度以上の難聴が続くと言語取得にも影響が出るため注意が必要です。また高齢者の加齢による耳管機能の低下によっても生じます。加齢による難聴と放置されていることもしばしばです、成人の場合は典型的には鼻炎や副鼻腔炎後に生じることが多いですが、まれに上咽頭腫瘍などが原因となる場合もあり注意が必要です。
診断・治療
耳鏡で鼓膜を観察し滲出液の貯留を認めれば診断されます。聴力検査では伝音難聴を認め、ティンパノメトリーと呼ばれる鼓膜の動きの検査では鼓膜の可動性の低下を認めます。治療としては耳管機能の低下の原因の除去が基本となります。鼻炎や副鼻腔炎の加療としては抗生剤や抗ヒスタミン薬、去痰薬などを投与します。小児や高齢者などの耳管機能低下の原因の加療が困難な場合は鼓膜切開を行い中耳腔の滲出液の排出を行います。鼓膜切開部が閉鎖した後に再発する場合は鼓膜チューブを留置し持続的に滲出液を外耳道に排出させる場合もあります。鼓膜チューブは自然に脱落する場合もあれば経過をみて抜去する場合もあります。鼓膜チューブ留置中でも洗髪などは問題なく行えますが、潜水は耳栓をつけて行うなど制限があります。
③ 慢性中耳炎
病態
中耳の炎症の治療反応が低く慢性化・遷延化した状態を慢性中耳炎と呼びます。多くは繰り返す炎症のために鼓膜穿孔を認め、難聴や耳だれを伴います。進行すると長期的な炎症により耳内の構造破壊がおき、中等度難聴が出現する場合もあります。内服による保存的加療で改善を認めない場合は手術を行います。
診断・治療
急性中耳炎が抗生剤なとの治療で完治せずに繰り返し慢性的経過をたどった場合に診断されます。炎症が慢性化すると鼓膜に穿孔を認め乳突洞や乳突蜂巣といった周囲の骨の空洞に細菌が住み着いた状態となりさらに症状が遷延します。治療としては耳洗や抗生剤の内服や点耳薬の使用により炎症を抑えるのが第一ですが、根本的には手術による炎症コントロールが必要となってきます。細菌が住み着いた周囲の骨の空洞を清掃する乳突削開術、穿孔した鼓膜を作り治す鼓膜形成術、音を伝える中耳内の耳小骨を再建する鼓室形成術などが一般的な手術となります。
④ 真珠腫性中耳炎
病態
真珠腫性中耳炎は慢性中耳炎に含まれますが、真珠腫と呼ばれるものが原因のため特別な病名がついています。真珠腫は基本的には耳垢のかたまりですが、細菌が住みつき感染を伴うようになると周囲の骨破壊を起こすようになり内耳障害や顔面神経麻痺や三半規管障害といった重篤な症状を引き起こします。原因としては幼少期の耳管機能低下により中耳の換気不全が長期化し鼓膜が内側に引っ張られ陥没することで生じた凹みに耳垢が溜まり真珠腫を形成していきます。真珠腫の進展度、場所によって様々な症状を呈します。
診断・治療
真珠腫が慢性的に感染を起こした場合は耳痛、耳漏を主訴に受診されます。真珠腫が耳小骨を破壊すれば難聴を、三半規管を破壊すればめまいを、顔面神経管を破壊すれば顔面神経麻痺が出現します。治療は原則として手術による真珠腫の摘出が第一となります。真珠腫により半規管や顔面神経が傷害されると真珠腫を摘出したとしても後遺症が残る可能性が高いため、重症化する前に初期の段階で摘出することが大切です。
耳かきは外耳道をかいています。外耳道は保湿効果と鼓膜迄の緩衝地帯の役割と音を増幅する作用があります。外耳道の長さは成人で3㎝弱です。たった3cmの外耳道というストローみたいなチューブを音が通ることで音は増幅されます。外耳道は異物の侵入を防ぐ為にゆるくS字状にカーブしています。外耳孔から鼓膜までの約半分が軟骨部、その奥が骨部です。骨部は皮膚も薄く痛みを感じやすいです。耳かきをして痛いと、それは鼓膜に近い骨部をかいているということです。軟骨部のみ耳毛や耳垢を分泌する皮脂腺や耳垢腺があり、骨部では耳垢は産生されないので、耳掻きは軟骨部のみ行います。しかし病院では骨部まで耳垢を押し込んで難聴感を主訴に来院する方は多いです。最近、自分で耳穴をみながら耳かきをする製品がありますが、人々は通常ブラインドで耳掻きをしています。外耳道の構造をイメージして掻くことで、外傷による鼓膜穿孔等が防げます。
耳垢(Ear Wax)の性状には油脂の成分により乾性と湿性があり、遺伝が関係します。日本人の耳垢は約90%が乾性なので耳かきの文化が発達したとも考えられています。欧州やアフリカ系の人はほとんどがアメミミと呼ばれる湿性なので外耳道の入り口部をティッシュでふくだけで耳垢が取れてしまう方が多いです。
耳垢は、耳垢腺から分泌される油脂や皮脂腺の分泌物や埃や皮膚の残骸物等が混合されており、その他に抗菌蛋白までが含まれていることで外部侵入を防いで、細菌繁殖を抑えます。この作用により、通常虫は外耳道に侵入しませんが、当院では外耳道に虫(特に小さなゴキブリ)が入っている例は年に1回はあります。バタバタと音がするということで、耳の中をみたら、外耳道内に虫の羽が見えたときはあっと声を出してしまいました。次の年、同じようなことがあり、そのときは当時の副院長先生(女性)が対応して、叫び声をあげてしまったことがあります。はっきり言って気持ちはわかります。耳垢が溜まりすぎると、細菌や真菌を繁殖させてしまいます。よって少しの耳垢により外耳道表面が薄くコーティングされている状態が理想であると考えられています。
鼓膜から外側に向かい、外耳道の皮膚がベルトコンベヤのように移動運搬し、耳垢を外に運びます。約3ヶ月で鼓膜付着物も排出してしまいます。また顎の運動によっても、耳垢は外側に移動されます。外耳道はこのような自己清掃作用を持っています。耳垢はとる必要は基本的にはありません。外耳道の自浄作用により、外に出てきます。耳垢塞栓患者が乾性の耳垢であれば1年毎、湿性の場合は3ヶ月毎のフォローアップが望ましいです。補聴器を装用すると、補聴器に耳垢がつまり壊れてしまうこともあります。また補聴器が耳垢を塞ぐだけでなく、補聴器が軽く外耳道を傷つけてしまうことで、ベルトコンベアシステムの機能も低下してしまうかもしれません。
耳垢塞栓の原因として、移動運搬作用の低下と耳垢をつくる皮脂腺や耳垢腺の分泌活動の促進によるものです。加齢により耳垢腺の分泌が減り耳垢が硬化してしまい、移動運搬作用が低下し、耳垢塞栓になることがあります。また、男性では、加齢とともに眉毛・髭・耳毛・鼻毛が多毛になります。耳の中の毛が多毛になることで、毛に耳垢がまとわりついて、耳垢が溜まりやすく、取りにくくなります。特に耳毛が白くなると、耳鼻科医が顕微鏡で見ても耳毛と耳垢が区別がつきにくく耳垢がとりにくいことが多々あります。
外耳道には、こすると気持ちの良くなる組織や神経支配があります。汗腺にはアポクリン腺とエクリン腺があります。耳垢腺は腋臭の原因ともいわれるアポクリン腺です。緊張やストレスでアポクリン腺分泌が亢進し、情動と関与しています。外耳道の知覚は、迷走神経の枝のArnold神経と三叉神経の枝で支配されており、Arnold神経の刺激により耳掃除で咳がでます。場合によって迷走神経反射を起こすこともあり、これらの複雑な神経支配や情動と関与した腺構造のからみで、外耳道をこする耳掻きや耳掃除が気持ちよくなると考えられています。
耳かきをしすぎると悪循環で痒みが強くなったり、難聴になることもあります。頻繁に綿棒で耳掻きをして耳痛を訴え来院する患者は多いです。このような患者の外耳道には耳垢を認めずつるつるで少し赤みを帯びていることが多いです。カメラ付き内視鏡で、外耳道を撮影して耳掻きの必要性がないことを本人に納得させることもあります。耳垢をとろうとして外耳道の皮膚をこすり、皮膚に軽い炎症がおこることで、痒みの元となる物質を出す炎症細胞が集まり、また掻いてしまうという悪循環により、外耳道炎がおきて外耳道が閉塞し、激痛と伝音難聴になることは多いです。また耳掻きによって、耳垢の分泌は促されます。少量の耳垢の鼓膜の付着でも、違和感だけでなく、難聴感や耳鳴を訴えることがあります。国立長寿医療研究センターの報告では、耳垢により平均7dB聴力が低下しているそうです。7dBは、だれもが音の大きさの変化を感じます。ひどい場合は、耳垢栓塞により最大約40dBの伝音難聴になってしまうこともあります。
メンテナンスは月に1~2回程度で耳かきをすればよいです。欧米での耳垢除去の為のガイドラインでは、耳掻きや耳掃除自体が耳の損傷につながると書かれています。欧米では日本人に多い乾性耳垢が少なく、日本にはない種類の耳垢水が販売されているなど、背景が異なりこのまま当てはまることはありません。海外で耳にローソクのようなものの煙をいれて、耳垢をとるという製品がありますが、まず効果はなく、耳垢のようなものが大量にでてきますが、ほぼローソクの蝋のようなものです。日本では耳かき自体が癖の人も多く、耳かきが題材の物語や専門のエステサロンまで存在し、耳かき自体が一種の文化です。耳垢除去後、難聴や耳閉感、耳痛や耳漏があるときは、耳鼻咽喉科を受診し、自分の耳垢の性状や外耳道の状態を把握し医師からの指導を受けてください。綿棒や耳かきを使う場合は、月に1~2回程度にして、左右別々で、清潔なものを用い、入口から1㎝を限度に、内壁に沿いそっと円を描くように拭うだけで十分です。加齢変化により、軟骨部の骨化がすすみ、外耳道の形状・形態も変化し、痛みを感じる所が増加するので、注意が必要です。
耳垢は高齢者及び知的障害者に頻度が高く、湿性耳垢の頻度が高い欧米において高齢者約30%に耳垢栓塞があるそうです。国立長寿医療研究センターの報告では、日本でも高齢者10%に良聴耳で耳垢があり,耳垢によって聴力が低下していることがあるようです。また耳垢がある人は認知の機能が低下しているそうです。日本においては乾性の耳垢の頻度が90%で耳垢がつまりにくい傾向ですが、自浄作用が低下した高齢者において硬くて鱗のようになってしまった耳垢が剥がれ落ちないままで溜まってしまい、伝音難聴をおこすだけでなく、外耳道びらんやひどい場合は外耳道骨破壊までおこしてしまうこともあるようです。
耳鼻咽喉科の専門医でも、除去には苦労します。顕微鏡を使ってやっととれるものが、結構あります。耳垢をとる鉗子は5万ぐらいして、顕微鏡も100万以上して、結構経費かかっています。最近、耳鼻咽喉科専門医以外の治療で、耳垢を外耳炎と間違えて長期抗生剤を処方された方や、あげくに抗生剤の使い過ぎでカビが生えてしまったかたなど悲惨な方が、当院に結構いらしています。人間だいたい耳垢があります。耳垢を除去せずに、外耳炎や中耳炎と診断され、なかなか治らない場合は注意しましょう。
参考文献
・老化と毛髪変化:日本臨床皮膚科医会雑誌 24(3), 221-8, 2007-04-15
・Clinical Practice Guideline (Update): Earwax (Cerumen Impaction) Schwartz et al. S1-29 Otolaryngol Head Neck Surg 156(IS),2017
・Clinical practice guideline: cerumen impaction.; Roland PS et al. Otolaryngol Head Neck Surg 139(3Suppl 2)S1-21,2008
・驚異の小器官 耳の科学 杉浦彩子 ブルーバックス 講談社
・Ear wax Wright T. BMJ Clin Evid 2015
・A SNP in the ABCC11 gene is the determinant of human earwax type. Yoshiura K et al Nat Genet 38:324-30,2006.
・高齢者の耳垢の頻度と認知機能 聴力との関連 日老医誌 2012;49 pp325-9
・耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻 5号医学書院 (2018年4月)pp.2-3
耳垢に対するガイドライン(米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)抜粋
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0194599816671491
1)過剰な耳掃除はしない。綿棒も注意を!!
2)イアーキャンドルは使用しない
3)自宅でできる耳垢塞栓の改善法は医師に相談
4)耳痛 耳漏 または耳からの出血は医師の診察を受ける
副鼻腔気管支症候群(Sinobronchial syndrome:SBS)とは?
慢性・反復性の好中球性気道炎症を上気道と下気道に合併した病態と定義されます。慢性副鼻腔炎に下気道の炎症性疾患である慢性気管支炎、気管支拡張症あるいはびまん性汎細気管支炎が合併した病態です。長引く咳嗽の鑑別診断として重要です。
症状は?
鼻汁(黄色~緑色の粘り気のある)、鼻閉、頭重感、後鼻漏、咳払い、のどの違和感といった副鼻腔炎の症状に咳・痰・微熱などの呼吸器症状を呈します。
原因は?
後鼻漏が気道の中に落ち込むという説と線毛の機能障害節等があります。
診断基準?
① 八週間以上続く呼吸困難発作を伴わない湿性咳嗽(慢性的に痰の絡んだ咳嗽)
② 次の所見のうち一つ以上を認める
1)後鼻漏・鼻汁・咳払いなどの副鼻腔炎症状
2)敷石状所見を含む口腔鼻咽頭のおける粘液性あるいは粘膿性分泌液
3)副鼻腔炎を示唆する画像所見
③ 14・15員環系マクロライド系抗菌薬や喀痰調整薬による治療が有効
①~③すべてを満たすことが必要
日常生活の注意点!
禁煙・感冒予防・規則正しい生活をして抵抗力や免疫力の維持
参考)日本内科学会雑誌109-10 P2132-6
参考)日本呼吸器学会咳嗽喀痰のガイドライン2019作成委員会編メディカルビュー社2019
慶友銀座クリニックの耳鼻咽喉科では、風邪とインフルエンザの診察を行っています。これらの疾患は、のどの状態を医師が把握することがとても大切なので、まず耳鼻咽喉科が主となり診断治療し、咳が酷く気管支炎や肺炎を起こしている可能性がある場合は、当院の内科と連携してダブルで治療をおこなっているので安心です。症状がひどい場合に、複数の科のベテラン医師達が相談しながら診察するのが当院の特徴です。
風邪(かぜ・感冒)とは、医学的にはかぜ症候群ともいいます。疫学的には、全ての年齢層に発症して、健康な人の大半が罹患する疾患です。鼻やのど・口腔咽喉頭(上気道領域)の粘膜にバイ菌(微生物)が付着して感染して起こります。なので、のどを特殊な光源を使って的確に観察できる耳鼻咽喉科が風邪に強いというのは理由があります。時として、この感染からくる炎症が気管・気管支・肺にまで波及して、重篤な気管支炎や肺炎を起こしてしまうことがあり、この場合は内科医及び耳鼻咽喉科でも気管食道医による治療が必要となります。慶友銀座クリニックでは、耳鼻咽喉科医と内科医が、一人の患者様を前に相談しながら連携することで、耳鼻咽喉科の担当である上気道と内科医の担当である下気道を診察することで、適切な治療が行えるようにしております。
風邪を起こすバイ菌の8割から9割がウィルスで、残りは細菌や肺炎マイコプラズマや肺炎クラミドフィラやクラミジアなどのウィルス以外による感染です。この原因のウィルスの数は200種類以上あると考えられ、どのウィルスが原因で起こったかを特定することはとても難しいです。新型コロナウィルスによる感染でも、PCR検査をやってわかるかどうか、少しでも変異しているとよくわからない、もしかしたら他のコロナウィルスを検知したかもしれないという状況です。同じウィルスでも(今回のコロナウィルスでも)、何個かの形が有り(今回の新型コロナでは武漢・欧米型など)、年々変異すると考えられています。一度感染して免疫ができても、ウイルスのタイプが膨大にあり、ウィルス自体が少しずつ環境に合いながら変異していくため、繰返し感染してしまいます。インフルエンザを起こしてしまうインフルエンザウィルスは、この風邪をおこすものとは違い、症状が重篤度が違うので別のものと考えていいと思います。
【風邪(かぜ症候群)の原因ウイルス】
種類 | 主な特徴 |
ライノウィルス Rhino-Virus |
Picorna-virus科 大人の風邪の30~50%の原因です。Rhinoとは鼻のことで、鼻かぜウィルスとも呼ばれています。春・秋に多い。ライノウィルスの血清型は数百以上あり、このウィルスによる風邪を全て防ぐワクチンの開発は絶望的と考えられています。 |
コロナウィルス Corona-Virus |
日常的に人間に感染するとされるコロナウィルスは4種(HCoV-229E/OC43/NL63/HKU1)です。 かぜ症候群の原因としてライノウィルスの次に多く(10~15%)、主に冬に流行のピークがあり、軽症が大部分ですが、高熱を引き起こすこともあります。しかし、急性呼吸器疾患であるコロナウィルスを原因とする重症急性呼吸器症候群コロナウイルスSARS(SARS-CoV) 中東呼吸器症候群コロナウイルスMERS(MERS-CoV) 新型コロナウィルスCOVID-19(SARS-CoV2)は致死性有 |
RSウイルス RS-Virus |
2歳までにほとんどの乳幼児が感染し、重症化で気管支炎や肺炎を起こします。特徴は、痰が詰まったゼイゼイする咳、ゼーゼーのどが鳴る音(喘鳴)、発熱、細気管支炎になり数時間で重症化することがあります。9月頃より流行し初春まで続くとされてきましたが、近年夏より流行が始まるようになりました。感染力が強く、何度も感染を繰り返します。保育園や幼稚園等の施設内感染に注意が必要です。 |
パラインフルエンザウイルス HPI-Virus |
子供の感染は、大人に比べて重症になりやすい。秋と春~夏に流行。子供での下気道炎(肺炎・気管支炎・細気管支炎)の原因となるウィルスとして、RSウィルスの次に多い。一生の間に何度も感染します。 |
アデノウィルス Adeno-Virus |
呼吸器・目・腸・泌尿器などに感染。血清型は51(特に1から8型)に分類。多くの型があり、一生の間に何度も感染。 呼吸器の感染症は、鼻炎・咽頭炎・扁桃炎をおこし、せきやクループ、気管支炎、肺炎をおこすことがあり。 咽頭結膜炎はプール熱と呼ばれ夏に多く発生。学校保健安全法上の学校感染症のひとつ。流行性角結膜炎もおこし、学校保健安全法上の学校感染症のひとつ。胃腸炎も乳幼児に多く、出血性膀胱炎をおこし、血尿をおこすこともあり。 |
エンテロウィルス Entero-Virus |
手足口病やヘルパンギーナ、流行性胸痛症・ポリオをひきおこす。夏に流行し、風邪症状の他にも下痢をおこす。 |
風邪(かぜ症候群) 大流行の歴史 随時発生*新型コロナCOVID19(別記参照)含む |
インフルエンザ感染症 大流行の歴史 大正:スペイン風邪A(H1N1) 昭和:アジアA(H2N2) 香港A(H3N2) 平成:A(H1N1) |
|
主症状 | 微熱~高熱 鼻水・くしゃみ・咳 のどの痛み 全身症状弱く、重症化少ない(*COVID19致死性有) |
高熱(38~39℃)頭痛 筋肉痛・関節痛 全身症状強く、重症化しやすい 小児は急性脳症に注意 老人は肺炎や重症化に注意 |
発病と感染経路 発病状態と感染経路 |
発病はゆるやか 経路は、飛沫感染が主、接触感染や空気感染も成立 |
急激に発症。 経路は、飛沫感染が主、接触感染や空気感染による感染も成立。飛沫感染の場合、1~1.5mの距離で、周りの人の呼吸器に侵入しインフルエンザウイルスは感染。空気が乾燥していてもウイルスは長時間生存可能で、ウイルスの付着したものから人へ簡単に感染をおこす。 |
病原体 | ウイルスの原因8割 ライノウィルスやコロナウィルスは変異しやすい。 一生に何度もかかる |
インフルエンザウィルス A型 B型 C型 (流行性はA・B型) 直径は約1万分の1㎜で、通常マスクを通過。抗原性よりABCの3型。A・B型の表面に2つの棘があり、ウイルスが感染する役割を担う。棘はHAヘマグルチニンとNAノイラミニダーゼという蛋白質。C型にはなし。A型のHAはH1~H16:16種、NAはN1~N9:9種。A型には16x9=144の亜型が存在。B型にはHAもNAも1種類のみ。インフルエンザA型のH1N1型がAソ連型、H3N2型がA香港型。 C型は軽い風邪症状。毎年流行を起こすのはA型B型で、大流行を起こすのはA型。人が未経験の亜型のインフルエンザウイルスが、鳥や哺乳動物からまず感染し、人ー人伝播しながら人の体内で増殖できるようになり、人にかかりやすい型へ急速に変異し大流行をおこすインフルエンザは、新型インフルエンザといわれ、亜型の多いA型に属す。鳥インフルエンザ(H5N1)は強毒性で、人ー人伝播し強毒性を保ってしまう場合に備え、WHO等で世界的に監視中。 |
ワクチン | なし(変異しやすく製造困難) *COVID19のみ最近開発 |
あり(毎年接種) |
潜伏期間 | 2-3日 | 1-7日間 流行性有。日本では、例年12月~3月頃に流行するが |
治療 | 対症療法 | 抗インフルエンザ薬 対症療法 |
登校出社の禁止期間 | 通常なし *COVID19のみ有 |
周囲へのインフルエンザ感染防御(H5N1及び新型等感染症除く)のため、発症後の5日間、かつ解熱後の2日間(幼児は3日間)は自宅安静が基本的な考え方。学校保健安全法の規定により、多くの会社ではこれをベースにしています。発熱したことを発症と考え、日数を超える場合は発症日を含まないで翌日を第一日と考えます。解熱は体温が定常的に36台に回復した状態です。 参考) 「学校保健安全法 施行規則第19条」 |
同時に罹患する場合もあり、共通する予防法で十分効果があります
① 規則正しい生活と休養と睡眠、バランスのとれた食生活
② 流行している場合は、人混みを避ける(3密を避ける)
出かけることが必要な場合は、マスク(できれば医療用マスクに準じたもの)をして出かけましょう。国際空港も世界から病原体が集まってくる場合があります。日本で流行していなくても、鳥と共存する東南アジアを含む他の国や南半球で流行している場合があります。よく注意して下さい。
③ 部屋の換気と、湿度の維持
気道粘膜の防御機能は乾燥すると低下し、感染しやすくなります。湿度は50%程度をキープしましょう。部屋に湿度計を置いて、いつもチェックするといいですね。
④ ワクチン接種
感染後に発病する可能性を減らしたり、重症化を防止する可能性があると考えられています。特に高齢者や基礎疾患をもっている方は、重症化防止という意味からもワクチンの接種が奨励されます。
⑤ 飛沫感染対策
咳エチケットの徹底や、咳やくしゃみが出た場合や、これから出そうな場合は、マスクをして人にうつさないようにする。
⑥ 家に帰ったら手をまず洗いましょう。
石けんやアルコールを使い、家に帰ったらまず手を洗いましょう。玄関に簡易型の速乾型のアルコール製剤を置いて、靴を脱ぐ前に手を消毒するのはよい方法です。
加齢性難聴(老人性難聴)は、高音域から始まります。健診では1000Hzと4000Hzの2つしか調べないので、見落としが多くなります。耳鼻咽喉科での標準純音聴力検査でわかります。40歳代から中には始まる人がいますが、50歳ごろより多くなり、65歳を超えると増加し3人に1人の割合で増加し、75歳以上では7割を超えます。認知症との関連がいわれており、認知症を予防できる要因の筆頭が難聴の治療と報告されています。補聴器による早期の治療が認知症を防ぐと考えられます。
当院理事長は、以前勤務先の病院(静岡市立清水病院)の耳鼻咽喉科・頭頚部外科の責任者のとき、歯科医師とともに口腔顔面痛の診断治療を行っていました。また東京医科歯科大学主催の口腔顔面痛の講座を受講しました。そこで学んだのは、歯科だけでなく耳鼻科領域もかなり関係するということでした。また歯科で診断を行っても、処方が歯科では限られ、医科との連携が処方上必要だということでした。当院では、耳鼻咽喉科・頭頚部外科的なアプローチを元に診断治療を行います。
原因
・歯痛(歯根膜炎等)
・三叉神経痛(耳鼻咽喉科医が担当。痛みが顔の片側だけにある。時々激しい痛みが2-3分続く)
・舌咽神経痛(耳鼻咽喉科医・頭頚部外科医が担当)
・帯状疱疹後疼痛(当院耳鼻咽喉科医が担当)
・歯性上顎炎(当院のXPやコーンビームCTにて診断可能)
・顎関節症(当院月曜日の顎関節症の専門医が担当 要予約)
・舌痛症(当院耳鼻咽喉科医が担当)
・口腔乾燥症(当院耳鼻咽喉科医が担当)
・口内炎(ベーチェット病や潰瘍性大腸炎等の自己免疫疾患との関連があり、当院耳鼻咽喉科・頭頚部外科・内科・皮膚科が担当)
・精神的なものからくる痛み(関連病院精神科と連携して薬剤治療)
耳鼻咽喉科領域の飛行機の搭乗判断
IATA Medical Manual 2018 11th edition(飛行機の中の旅行医学 日本旅行医学会 参考資料)
耳鼻咽喉科病名 | 医師による判定対象 | 搭乗許可基準 | コメント |
中耳炎及び副鼻腔炎 | 急性発症あるいは耳管機能不全 | 耳管閉塞が解消されること | |
中耳手術 | 術後9日以内 | 術後10日以降 耳鼻咽喉科専門医から医療証明書を発行してもらうこと | |
扁桃切除 | 術後10日以内 | 3日目から6日目の間は搭乗可であるが、1日目と2日目の間及び7日目と10日目の間は出血のリスクあり。「当院の独自基準では、退院後1週間後の主治医による」 | |
伝染病 | 感染源となる期間 |
A 航空性中耳炎
飛行中、機内の気圧は0.8気圧に調整されますが、上昇中と下降中に気圧が変動します。高度1万mの飛行は、機体への空気抵抗とエンジンの推進力の兼ね合いにより、双方の効率が一番良いので、旅客機は離陸後高度を上げ、高度約1万mを音速に近い約900km/時で飛行します。機内は気圧調節装置とエアコンにより地上に近い環境を作り出します。胴体の強度を保つため、機内気圧は、地上と同じ1気圧より低い、約0.8気圧に調整されています。気圧の変化は航空機の離陸後の上昇及び着陸前の下降の各々15~30分の間に起こります。このとき鼓膜の外と中耳(鼓室・乳突蜂巣)の圧との圧差が生じます。
飛行機に搭乗中、鼓膜内外の圧差により航空性中耳炎になり耳が痛くなることがあります。航空性中耳炎は、離着陸時での急激な気圧変化により、鼓膜の内外で圧力の差が生じ耳の炎症や耳痛をおこす病気です。上昇時に機内の気圧が低下して、中耳(鼓室-乳突蜂巣)の空気が膨張してしまい、鼓膜の内側の気圧が外側に較べて相対的に上昇し、鼓膜が膨隆します。上昇中は嚥下なしでも過剰な空気が耳管より鼻咽頭に排出されますが、ごくんと嚥下をするとさらに改善されます。飛行機上昇時は耳閉塞感程度で済むことが多く、旅客機では下降時に比べて上昇中の症状は少ないです。水平飛行中は、鼓膜の内外の気圧は同じに保たれているが、飛行機の着陸時には外気圧の上昇が短時間でおこります。下降時、中耳の空気が縮小し外界圧に対し相対的陰圧となり鼓膜は内陥します。通常は嚥下により耳管が開き中耳圧と外界圧は平衡となり耳症状が消失しますが、耳管が開かないと中耳圧と外界圧の圧差が増大し、耳症状が悪化します。強い耳閉塞感や耳痛・難聴・耳の違和感・耳鳴・めまい等が起こります。軽症の場合は、耳閉感や軽度の痛みが出ますが、数分~数時間で治ります。しかし、感冒をひいていたり、鼻炎があると症状が重くなり、針で刺されるような痛みや「ゴー」というような低音の耳鳴りがでます。このような場合は、耳鼻咽喉科医による治療を行わないと、数時間~数日の間まで症状が続いてしまいます。
航空性中耳炎は、乳幼児だけでなく大人にもみられます。着陸して暫く時間を置くと治まることが多いですが、着陸後から半日も症状が続く場合は、患者は耳鼻咽喉科を受診すべきで、その際、飛行歴を担当医に知らせるべきです。詳細な問診をベースに、鼓膜の状態や聞こえの状態をみます。耳鏡で鼓膜を詳細に観察します。鼓膜の内陥や、血管拡張や充血出血・中耳粘膜からの浸出液の露出や血性の貯留液を生じ、鼓膜に穿孔をおこしてしまっていることもあります。鼓膜所見は僅かでも自覚症状が強いことがあります。僅かな気圧の変化に過敏に反応し耳痛を訴える気圧過敏症と考えられる症例や、耳管の開大圧は低いが陰圧負荷が生じると耳管が開かないcompliant tubeにも注意して医師は診断治療します。幼児は自分の症状を訴えることができず、高齢者も鼓膜所見に比べて自覚症状に乏しく、どちらも鼓膜所見を重視します。聴力検査及びティンパノグラム、耳管機能検査法を施行し、難聴がひどい場合は急性感音難聴や航空性外リンパ瘻も鑑別する必要があります。
治療は急性中耳炎や滲出性中耳炎の治療に準じます。保存的治療(耳管通気を含む)をまず選択しますが,難治性や反復する症例に関して鼓膜切開や鼓膜チューブの留置を行います。原因の病気として、アレルギー性の炎症・上気道感染・鼻副鼻腔炎・鼻中隔弯曲症・中耳圧負荷時の開大等の耳管機能不全があり、これらの治療も同時に行う必要があります。鼻炎の場合は副鼻腔を観察するためにレントゲン写真が有効です。繰り返す場合は、上咽頭の腫脹があり、内視鏡による精査が必要です。場合により悪性リンパ腫や癌の場合があります。特に中国の人はEBウィルスによる腫瘍の場合があり注意が必要です。まずは予防が大切です。繰り返す場合は耳抜きの方法を覚えましょう。繰り返し起こすことが多く、事前の予防が重要である。軽症の場合は、下降時にまず唾液嚥下、あくびをする・飴やガムを食べる・飲物を少しずつ頻回に飲む(アルコールは避ける)ことが有効です。よく着陸前に飛行機内でドリンクがでることがありますが、ぜひ寝ずにそれを頼み少しずつお水等を飲むのがとても有効です。特に飲酒は耳管周囲粘膜を腫脹させ、眠るとつばを飲む回数が減るので、耳管の通気ができにくくなります。これらの行為を行うために飲酒及び特に降下時の睡眠はなるべく避けましょう。鼻炎や上気道感染があれば、事前にその薬物投与を含めた治療を行う必要があります。血管収縮作用のある点鼻薬を搭乗直前と下降態勢時に噴霧も有効ですが、海外フライトの場合は噴霧剤の持ち込みに注意が必要です。内耳障害を避ける耳抜き法としては、吸気後に呼気時に鼻を摘まむと鼻咽腔が陽圧となり、この状態で嚥下又は下顎を左右に動かして陰圧になった中耳へ空気を送るようにさせることもありますが事前に医師の指示に従ってください。耳管による中耳腔調節の回数が多いほど、航空性中耳炎になりやすいので、飛行距離よりも離着陸の回数が関係します。遠方のフライトよりも、同じ日に離着陸を繰り返す諸島方面のフライトは注意が必要です。必要時担当産業医とも連携し治療を行うこともあります。
参考文献
1)Air travelers’ awareness of the preventability of otic barotrauma. Mitchell-Innes A et al. J Laryngol Otol 128-6: 494-8, 2014.
2)Otic barotrauma from air travel, Mirza S, Richardson H., J Laryngol Otol Vol119-5; p366-70, 2005
3)航空性中耳炎に関する基礎的ならびに臨床的研究 山口展正 耳展 29,353-90,1986
4)気圧外傷 急性難聴の鑑別とその対策 ENT臨床フロンティア 専門編集 高橋晴雄 山口展正 気圧外傷 治療のポイント 中山出版 p110-17,2012
5)気圧外傷 再発予防のアドバイス 守田雅彦 急性難聴の鑑別とその対策 ENT臨床フロンティア; p118-9, 2012
6)鼓膜を読む 航空性中耳炎 上出洋介 監修森山寛 山口展正 メジカルビュー社; p38-44, 2007
7)Middle Ear Resonance Frequency in Pilots and Pilot Candidates. Tuncer MM et al. Aerosp Med Hum Perform 87: 876-81, 2016
8) 耳鼻咽喉科・頭頸部外科90巻 5号医学書院 (2018年4月)pp.4-5
B 航空性副鼻腔炎
航空性中耳炎と同様のシステムにより、耳ではなく副鼻腔内と外気圧の間の圧の差が生じることにより、特に鼻及び顔面(副鼻腔)の炎症と痛みを生じる病気です。原因は、かぜや鼻炎(アレルギー等)・蓄膿症・鼻中隔彎曲症・鼻ポリープ(好酸球性副鼻腔炎)があり、副鼻腔にある鼻内への通路である自然孔の周囲の粘膜がつまっているときに起きやすくなります。治療は薬物による炎症の解除や、必要時内視鏡による鼻内手術や好酸球性副鼻腔炎の場合は免疫療法という注射で改善することが期待されます。
人間本来の呼吸は鼻呼吸です。特に冬場の冷たく乾燥した空気や、花粉・ハウスダスト・ウイルスの異物等は環境ストレスとなり、呼吸の入り口である鼻は、これらの環境ストレスにさらされています。この環境ストレスにより、鼻の粘膜はうっ血し、鼻閉を生じて鼻呼吸から口呼吸に変化してしまいます。口の呼吸はのどや鼻の不調だけでなくて、様々な身体のトラブルを生じる原因となります。
鼻呼吸の役割としては、まず鼻毛と鼻腔の線毛で異物やウイルス除去し、鼻腔の中で外気を加温・加湿し、この 加温・加湿されたきれいな空気が肺に送られます。鼻は加温・加湿機能つきの空気清浄機ともいえます。
口呼吸の役割としては、異物やウイルスが除去されない状況で、冷たく乾燥した外気が直接のど~肺に入ってしまい、のど鼻の不調・感染リスクが増大し、睡眠の質の低下になります。
蒸気吸入後の鼻腔の容積は、吸入前と比べて106%に拡大したとの報告があります。蒸気を吸入すると、鼻粘膜の血流が良くなり、腫れが低減すると考えられます。つまり、温かい蒸気を吸入すると、鼻腔が拡がり、鼻通りが改善するのです。蒸気吸入後の鼻腔抵抗値(鼻閉の具合)は、吸入前と比べて減少するとの報告があり、温熱蒸気吸入により鼻腔内の空気の流れがスムーズになったとも考えられます。
緊張すると呼吸が速く、浅くなることが知られています。そんな時は、深呼吸をして気持ちを落ち着かせることがあります。呼吸と気持ちには密接な関係があり、ストレスや不安は呼吸を乱し、呼吸を整えることで気持ちを変化させることができるのです。呼吸には、代謝性呼吸、随意性呼吸の他に喜怒哀楽の感情や、心の動きによって変化する情動呼吸があります。心地よい刺激は、ポジティヴな感情を生み、自然とリラックスした呼吸へ誘います。このように心の動きと呼吸は密接な関係があります。
蒸気を吸入すると、呼吸数が少なくなり、呼吸1回の換気量が増えました。ゆっくりとした深い呼吸に変化したことで、気持ちが落ち着き、自覚的な気分が吸入前と比べて改善しました。このように温かい蒸気を吸入すると、呼吸が整い、気持ちも変化します。
入眠前は心と体をリラックスしましょう。睡眠は体の疲れを癒やし、心身の修復や記憶の整理・定着など、人間が生きていく上で必要不可欠な生活習慣です。睡眠の量的不足、質的悪化は生活習慣病のリスクを高め、生産性の低下やヒューマンエラーの増加など、日々の生活に様々な支障をもたらします。良い睡眠は入眠前に心と体をリラックスすることが大切です。蒸気や香りの吸入は、不安感を減少させるとの報告があります。特に蒸気と香りの同時吸入は、よりリラックス感を得やすいとのことです。また蒸気の吸入は、深睡眠が出現する時間を早め、起床時の自覚的な睡眠感も改善するとのことです。また、 入眠前に蒸気吸入を2週間継続したところ、主観的な睡眠感が改善し、身体的、精神的健康感も向上したとのことで、温かい蒸気を吸入すると、睡眠が改善し、生活の質も向上するようです。
このように蒸気の吸入は、鼻呼吸を促進して、気持ちをリラックスさせて、心地よい睡眠に誘います。蒸気吸入が鼻の機能に与える効果は、呼吸機能改善や気持ちの変化だけではなく、鼻腔には細菌等の異物を粘膜で捉え排除する粘液線毛輸送と呼ばれる防御機能が備わり、鼻腔の乾燥は粘液量を減少させて、冷たい空気が入っていることによる鼻腔内の温度低下は線毛運動を遅くさせるので、感染症の罹患リスクを増大させてしまいます。特に寒い冬の時期はのどや鼻を加湿して、鼻腔の防御機能を高めていきましょう。マスクの着用は感染防御と加湿という面からは有効です。また鼻には嗅覚を担う臓器(感覚器)としての機能があり、匂いがわからなくなると、風味がわからなくなり味覚も連動して機能が低下することで、生活の質が低下してしまいます。またガス漏れの臭いがわからないなど、これらの身体の安全にかかわる危険を回避できにくくなります。普段から鼻呼吸を意識することにより、生活の中の様々な香りを感じとって、心身ともに健やかな毎日を送ることが大切です。
[鼻呼吸を促進するためのヒント]
◎鼻を蒸気で温める
◎鼻の上を蒸しタオルで温めたり、加湿機能のついたマスクを用いることで、鼻通りが良くなります。
◎鼻呼吸トレーニング:指で右の鼻を押さえ、左の鼻から深く息を吸ってゆっくりと吐きます。次に左の鼻を同様に行い、左右交互に5セット施行します。鼻づまりが解消されて、鼻呼吸優位の状態になります。
【参考文献】
1)Fujita et al. PLoS One, vol14 no2 Article ID e0210957, 2019
2)Oda et al. J of Depression and Anxiety, VOL7 No4, 2018 DOI:10.4172/2167-1044.1000321
3)Ichiba et al. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine vol.2019, Article ID 2453483
4)呼吸を整えて心身ともに健やかに―鼻の機能を最大限に発揮し、健康維持・増進を実現するために― 帝京大学千葉総合医療センター 鈴木雅明 KAO
熱い辛いラーメンを食べると鼻水がですのは、なぜか?
当然ですが呼吸をしないと死んでしまいます。鼻は呼吸に使う酸素の消費量や外の環境(温度や湿度や化学物質)に対応することにより、呼吸機能を一定に保っています。そのためには鼻腔の抵抗や、加温や加湿や異物の排除機能を、瞬時に調節する必要があります。
①味覚性鼻炎
「鼻アレルギー診療 ガイドライン 2020」の鼻炎の分類によると、過敏性非感染性の鼻漏型に分類されます。味覚性鼻炎(Gustatory Rhinitis)では、香辛料が入ったスープ等をのんだ時に鼻水がでる鼻炎の病名です。全ての年齢でおこりますが、加齢により頻度が増えます。香辛料の中で、味覚性鼻炎を起こしやすいものは、カプサイシンやその類縁のアルカロイドが含まれています。例としては、カプサシン(チリペッパー・タバスコソース)・アリルイソチオシアネート(西洋わさび)・ピペリン(黒こしょう)です。これらの物質(アルカロイド)は、TRP(Transient Receptor Potentia)Channel(侵害温度刺激受容Channel)に対する作動物質であり、このChannelが関係する神経伝達のシステムが味覚性鼻炎の病態の生理システムと考えられています。
②気道保護
熱い湯気を鼻水の気化熱で冷まそうとするラジエーター的な作用です。鼻水が気化することにより、鼻に入ってくる熱い空気の温度を下げます。熱さの刺激を和らげようとする反射的な反応です。。汗をかいて体温を冷ますのと同じ作用です。
とても熱い空気がそのまま鼻から気道を通じて肺に入り、気道熱傷になってしまうことを防ぐシステムです。気道熱傷になってしまうと生命にかかわることもあります。反対に極端に冷たい空気が鼻に入ってきて、寒冷刺激となって鼻水が出てしまうのは、鼻水が出ることによって、冷たい空気が鼻から気道そして肺に直接に入らないようにしているのです。
③異物除去
鼻は気道を通じて肺への負担を減らす為に、様々な異物を除去しようとします。鼻毛は異物除去の最初の関門です。花粉症やアレルギー性鼻炎を起こすシステムもこの異物除去の作用に含まれます。くしゃみ・鼻水をおこし、鼻に入ってくる異物を除去するのです。ラーメンスープの中には、こしょうを含めいろいろな物質が含まれ、それがおいしさのもととなります。湯気に一部含まれるスープの様々な物質に対しての異物除去作用が鼻水となる可能性もあります。
参考)Kondo K 東京大学; 鼻炎の病態生理と神経反射 耳鼻免疫アレルギー 35-3,261-5,2017
10月になると花粉症状(鼻水・鼻づまり)がでて、実は秋の花粉に対してアレルギー反応があるというかたは、毎年少しづつ確実に増えています。異常気象が関係するという方もいますが、よくわかりません。春の花粉症であるスギやヒノキは、飛散時期に関係する報道はありますが、秋の花粉症の代表的な種類であるブタクサ・ヨモギは特に報告はないようです。
10月はダニの死骸やダニの糞が特に家やオフィス中に多い時期です。ダニは夏に繁殖しますが、秋になると一斉に死んでしまい、部屋の中にダニの死骸や糞が蓄積します。
暑い日が長く続き、よってエアコンも長く使い、それによりエアコンの中のカビの繁殖が酷くなり、まだ暑いのでエアコンも使用することで、エアコン中のカビの胞子や菌糸が飛散し、鼻炎症状を起こしてしまいます。またエアコンによって、家・オフィスの中のハウスダスト(室内塵)の原因であるダニの死骸や糞が部屋中をまってしまい、ハウスダストによる鼻炎を起こしていると考えられます。また10月になると9月に比べてがくんと気温が下がることもあり、寒暖差のアレルギーもあると思います。
秋花粉;ブタクサ(キク科) ヨモギ(キク科) カナムグラ(アサ科)などの草の花粉。川原や土手にもあるが、住宅地やオフィス街にも自生している。
ブタクサの花粉はスギの花粉の大きさの半分なので、体の奥深くまで入りこんでしまいます。スギ花粉だと鼻毛に補足され鼻腔内にはいりこむことがなかなかできませんが、ブタクサ花粉は鼻毛をすり抜けて、鼻腔から気管支まで侵入して、気管支を炎症させて、咳をおこしてしまいます。また持病の気管支喘息を悪化させることもあり、10月の時期の長引く咳はブタクサの可能性もあります。
春の花粉は、上空の強い風に運ばれて数十キロ先迄飛散してしまいます。秋の花粉は草の花粉でもあるので、高さがせいぜい2メートルほどと低いということもあり、数メートルから100mしか飛散しません。原因となりうるブタクサやヨモギ等の草に近寄らないだけでも十分予防になり得ます。
また、春の花粉症と同じように、帰宅時に衣服の花粉を払い落としたり、ダニ対策として部屋の掃除や寝具の洗濯や天日干しが有効です。またダニは高温多湿が好きなので、除湿が有効です。ブタクサ花粉は、スギ花粉より小さいので、より人体に入りやすいです。布やガーゼやポリウレタンマスクではなく、花粉症用の高機能マスクが有効です。